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Romance夢紀行

Romance夢紀行

Archangel's Blade/ナリーニ・シン あらすじ

<あらすじ>Trying todiscover the identity of a murder victim brings together the vampire Dmitri and a hunter for the Guild, Honor. And as the gruesome murders continue, a lethal sensuality explodes between them.
※ ※ ※ ネタバレあります ※ ※ ※ 
辞書で確認せず、記憶に頼っててきとーに書きなぐっていますので、
内容が間違っていても笑って読み流せる方だけ読んでくださいね


とある田舎に美しい奥さんと可愛い子供の待つ家があるひとりの幸せな男性の姿がありました。家に迎えてくれた奥さんが声をかけます。「ディミトリ! おかえりなさい」

第1章 ラファエルとエレナは大天使キャリエーンの覚醒に絡み鹿児島に出掛けていて、あと数日で帰宅するところですが、ラファエル不在のあいだマンハッタンを任されているディミトリは惨殺されたヴァンパイアの死体を見下ろしていました。牙をみるとまだ転生して間もない生えかけの牙で、ディミトリやイリウムの知る自分たちの地域のヴァンパイアではなく、このあたりのどの天使の持ち物とも思えない雰囲気のヴァンパイアのため、まずは誰なのかを確認しなければということになります。ギルドのパソコンからデータをハッキングすることも可能ですが、今回はディレクターに応援を頼み、状況を知らせておくことにします。

イリウムはエレナに惹かれているようでディミトリにちらりと悩みを漏らしますが、ラファエルたちに忠誠を尽くしたいとも考えているようです。逆にディミトリには大事な女性はいないのかと尋ねますが、ディミトリは過去にいなかったし、そんな危険なことはしないと応えます。彼の秘密を知っているのは、ラファエルひとりでした。

ディミトリから連絡を受けたサラは、配下のヴァンパイアハンターのオナーを呼び出します。ヴァンパイアに2か月間監禁され、心と身体に傷を負い、ギルドアカデミーで授業を受け持ちながら世間から隠れている女性です。アーカンジェルタワーのヴァンパイア ドミトリのところへ行って捜査に協力するようにというサラの指示にオナーは強い拒絶反応をしめしますが、サラはハンターとしての契約を守るように、現実に立ち向かうように厳しく迫り、オナーは決意してタワーに出向きます。

第2章 タクシーでタワーの前に到着したオナー。ドミトリに面会します。ドミトリがオナーの首筋のひどい嚙みあとに気が付き、興味を抱きます。お互いに強く惹かれるものを感じますが、そしらぬふりをしてオナーはヴァンパイアへの恐怖心を抑え、自分が呼ばれた理由について確認しようとしますが、ドミトリは彼女の隠された恐怖心にかえってそそられて迫り、オナーは恐怖心から反射的にナイフで顔に切りつけてしまいます。彼女のことは見逃すことにして、被害者の入れ墨を示します。

ドミトリはオナーを帰すとすぐにギルドディレクターのサラに連絡を入れ、オナーの過去を問い合わせます。その事件が起こったのは、ウラムとラファエルが戦った後、ラファエルが自分を癒し、伴侶を見守るためにドミトリが領土を支えなかった時期で、ドミトリは業務に忙殺され事件を見落としていたようです。

オナーがヴァンパイアに浚われ、2か月監禁され、犯人は4人組だったけれどそのうち二人はランソムとアシュウィニに殺され、リーダー格の犯人は賢く、オナーは目隠しをされていて犯人の顔がわからず、今のところ逃げおおせているけれど、絶対に逃がさないとサラは告げます。ドミトリも、自分が興味を惹かれるオナーを傷つけた犯人はもちろん死ぬけれども、彼らの肉体に切りつけるときは個人的な喜びを感じて、遺体をどこかの穴へ放り込むだろう。それも繰り返し、と密かに考えています。

彼の過去が脳裏に蘇ってきます。

「ドミトリ、そんなに頑固になるものではないわ。私を愛してくれなくては」
裸で鎖を巻かれ、背中は与えられた罰でひき肉状態にされ、白い羽をもつ天使に拷問されているドミトリ。

部下から、ウラムの毒に晒されて一部変異したホリー・チャンについて連絡が入った40分後、ドミトリはホリー・チャンが恋人と住む自宅へついていました。ホリーは瞳孔が拡大し、ウラムの緑色になっていて、攻撃的な態度です。眼のことで恋人を怖がらせ、捨てられてしまった様子。血を飲めとドミトリは淡々と腕を差し出しますが、ホリーは人との接触に耐えられず、人工血液を飲んでグラスを叩きつけます。「わたしをホリーと呼ばないで、自分はあの日に死んだのだから」という彼女に何と呼べばよいのかと尋ねます。選んだ名前はサロウ。なぜすぐに彼女を殺さなかったのか考えていたドミトリですが、彼女は自分の子供のようなものなのだからだ、と思い至ります。

第3~4章 ギルドに戻ったオナー。どうせ眠れないと水着に着替えてプールでひと泳ぎ。シャワーを浴びて図書館に行くと、ランサムや親友のアシュウィニ、デマルコといったハンターたちがいて気が付くと食堂で4人が食卓を囲んでいて、事件後に初めて笑っている自分に気が付きました。

しばらくぶりにギルドアカデミー内の自分の部屋に帰宅したオナー。ペントハウスに住むくらいの稼ぎはあるものの、自分のこじんまりした部屋を居心地のよい巣に整えてきました。ただ気持ちが整うまではこのスペースにはいられないと感じます。アシュウィニに電話して以前借りないか聞かれた物件はまだ空いているかと確認すると、事件後に倉庫に預けてあったオナーの荷物はもうその部屋に運んであるという返事。他の人間に同じことをされたら激怒しただろうけれど、自分の気持ちを汲んで行動してくれる親友のアッシュにはそういう気持ちにはならないと感謝しています。

第5章 帰宅したドミトリの部屋に大天使のファヴァシが現れました。また恋人になれないかしら、大天使の伴侶として揮える権力の大きさを考えてと誘惑してきますが、ドミトリは二度と彼女を信用できず、けんもほろろに断ります。ファヴァシは野望のためにドミトリを裏切ったようです。本当の目的は何だと聞くと、本当によりを戻しにきたようで、カリセムノンもラファエルも伴侶を持ったので、自分も伴侶を持つべき時期に来たのではないかと考えてドミトリのことを思い出したということでした。

オナーが来たということで、ドミトリがその場に向かうとオナーのほかにもカルメンがいました。「一度寝ただけだ、2回目はない」と冷たくあしらうドミトリにカルメンは魅力全開でせまります。まるで中毒のような魅力をドミトリに感じているようですが、ドミトリが捕食者としての本性をみせて脅すと帰っていきました。それをみていたオナーは、私はあなたのものにはならないと改めてドミトリに言いますが、お互いに魅力を感じているのはわかっていることだろうと迫られ、調査結果が知りたければ後ろに下がって、とけん制します。自分の専門について話そうとするときのオナーの瞳の輝きをみて、ドミトリは初めて事件で壊されてしまう前のオナー自身を見たような気がしました。壊されるということについては、オナーが思うよりもずっと自分はよく知っていると。

「見るのよ、ドミトリ」
「やめろ、望むことは何でもする、這いつくばって足にキスだってする!」
「どちらにしても、そうするのよ」
「やめてくれ、お願いだ!」

第6章 オナーは入れ墨に添えられた謎の言葉についてアラビア語がベースになっているけれど、オリジナルの言葉で、ひょっとしたら暗号ではないかと。文字の下に引かれた線が暗号の鍵になっているのではという推論をドミトリに伝えます。

話し合いの途中でラファエルのスパイマスターである天使のジェイソンがドミトリにコンタクトしてきたので、オナーを待たせて、ジェイソンにバルコニーで会います。

ジェイソンはオナーが新生児に教会に捨てられた孤児だったこと、名前が発見者のシスターによってつけられたこと、そして事件で彼女がどんな目にあったのか知っているかとドミトリに尋ねます。ジェイソンは強く自分を律している天使で、他人からは距離を保つことを心掛けているため、強く干渉はしてきませんが、ドミトリのいつにないドナーへの反応に何か感じ取っているようです。そこにヴェノムが現れ、ドミトリに新しい報告を上げたようです。

第7章 残りの遺体が見つかったという連絡をうけ、ドナーはドミトリと共にフェラーリで現地に向かいます。ラファエルがあるヴァンパイアの骨という骨を折り、3時間タイムズスクエアに放置した事件はいまだに人々の記憶に新しく、そこで遺体が発見されたようです。

遺体はスポーツバッグからはみ出るようにしてみえていて、だれかが中身がなにかと開けようとしたところのようにみえます。これは不死者の仕業だ、とドミトリは判断しますが、オナーは人間にだって同じようなことはできると返します。ただ傷口からして不死者ではないかということのようで、高いところから落としたというよりは運ばれてきたのではないかという状態のようです。

ヴァンパイアハンターとしての訓練を受けているオナーは遺体の様子を確認し、身元不明のヴァンパイアの死体とこのバラバラ死体の関連性、不思議な暗号についてひらめくものを感じます。なぜ目立つタイムズスクエアに放置され、衆目を集めるようなことをしたのか、ドミトリはラファエルへの挑戦かと考えますが、オナーは今現在マンハッタンを取り仕切っているドミトリへの挑戦だと進言し、ドミトリも彼女の意見を吟味し、同意します。

ドミトリは、オナーをアカデミーに送り届けた後、タワーに帰宅するとヴェノムの報告を受けました。さらに大天使アスタッドの副官である天使から連絡があり、大天使キャリエーンのことなど情報交換をします。どうやらこの天使は大天使ミカエラの恋人でもあったようで、ある女性は恋人に爪をたてて血を流さずにはいられないと話していました。

その後オナーの監禁事件の犯人たちから直接聴取するため、ラファエルの館へ向かいます。もうすでにその事件については彼自身の狩りとなっていました。

第8章 ラファエル配下でおそらく犯人の刑罰を管理、担当している立場の天使アンドレアスに席を外してもらい、ラファエルの館に監禁されている犯人ヴァンパイア2人を容赦なく取り調べるドミトリ。すでに目はくりぬかれていましたが、骨を折り、痛みを与え、徹底的に白状させます。

手紙の指図で決まった時間にオナーを訪問していたこと、最初は恋人同士のプレイの一環で、そういうことが好きな女性だからと説明を受けていたこと、でも襲おうとしたら、オナーに鼻を折られて怒りのあまり暴力をふるってしまったこと、最初にさらったあと、次に行ったのは数週間後だったことなどを怯え、すすり泣きながら話します。

ラファエルの母であり大天使でもあるキャリエーンは有限の命の人間にとっての1日は不死のものの1年に等しいと言っていて、ドミトリも同感でした。オナーは3か月監禁されたので、それに相当する罰の期間は犯人を絶対に死なせるようなことはないようにしなくてはと考えています。

第9章 オナーの家に早朝現れたドミトリ。書類のようなものを持っていて、オナーがみるとそれはオナーの暴行後の入院先で作成された診断書でした。それをみてドミトリは皮膚に残された血を吸った位置が特別だったために、犯人に見当がついたようです。一緒に行きたいかと聞かれ、同行することにします。

着いたのは巨大な邸宅の前でした。対応にでたメイドには暇をやり、コックと女主人のペットたちは5分以内に家から立ち退くようにとドミトリが告げると、真っ青になってすぐに姿を消しました。女主人のヴァンパイアのヴァレリアは、最初ドミトリが旧交を温めにきたと、人間のペットを連れてきてくれたのだと考え、ローブ姿でドミトリを迎えますが、オナーに気が付くと、頭の中で計算して、なんとかドミトリの追及から言い逃れてまたオナーを自分のものにしたいと考えているのが伝わってきます。

ちょっとしたお楽しみだったの、招待状が届いて。彼女は頑固で、恐怖におそわれていたのに、何週間も悲鳴を上げなかったし、慈悲も請わなかったのよと言い訳します。共犯者を教えろと命令するとはぐらかすので、ドミトリは髪の毛をつかんで圧力をかけるとトミーという名前がでてきます。自分の順番の時間帯には彼がいたと。他にもいたけれど、私は姿をみなかった、と。

招待状の場所を言わせると、ドミトリはヴァレリアの喉を剣で壁に突き刺し、動いたら腕を切り取ると告げます。オナーには招待状を探すよう部屋から送り出し、更に尋問を続けます。オナーは言われた場所で招待状をみつけますが、その間にもヴァレリアの悲鳴が下から聞こえてきています。

第10章 ヴァレリアはアンドレアスの部下が来るまでイリウムに監視させる段取りをつけ、ドミトリとオナーはフェラーリでトミーの元に向かうことに。イリウムが空から庭へ舞い降りると、オナーは彼の美しさに驚きます。ただしドミトリから「ヴァレリアは何でもやるから、腕を切り落とせ」と命令を受けてもたじろぎもしない様子から、見た目で得をすることがあっても、それだけではない力量をもった人物なのだとオナーは見抜きます。

ドミトリは自分がラファエル配下の精鋭の7人衆ザ・セブンを率いているリーダーで、イリウムはセブンの一人だとオナーに説明し、イリウムにうっとりするのは構わないが、君は私のものだと宣言します。オナーは貴方とはできるだけ離れていたいの、あなたにNOといった人はいないの?と聞くと、ドミトリは「一人だけいた、妻だ」と応えます。ドミトリは今まで誰にも話したことのない妻のことをオナーには話していることに内心不思議に思います。

第11章 共犯者のトミーの家にいくと、インテリアは悪趣味そのもの。寝室に踏み込むと、ピンクのサテンのシーツに白い毛皮の縁取りの枕カバー、天井にはミラーがあり、オナーが「こんな部屋がポルノ以外であるとは思わなかった」と我慢できずに口に出してしまい、ドミトリが笑いだしてしまいます。ところが次の瞬間、冷たい顔をしてドミトリが「ここを出るんだ」という命令をするので、女には戦わなければならないときがあるのよ、とドミトリが見せまいとしたものを見ますが、それはオナーが監禁中に鎖につながれ、裸で血だらけの状態を撮られた数々の写真でした。

ショックをうけるオナーですが、写真を塵になる大きさになるまで小さくちぎり、また元になるデータを捜索し、本来だったら証拠物件ですが、本人が誰にもみせたくないものということで、ドミトリが車のトランクのおそらく道具箱からハンマーを取り出してきて、オナーに破壊させてくれます。

何か新しいことがわかったら知らせると約束して、ギルドで分かれる二人。オナーはセラーのヴィヴィクに会いに行き、自分の監禁中の写真がインターネットで拡散していないか確認してもらいます。

戻ったドミトリはヴェノムからサロウが姿を消したと報告を受けます。「彼女は自分で探す」というドミトリに入れ込みすぎると万が一処分しなければならなくなってしまったときに辛いと助言するヴェノムに、問題ないと言います。
結局、自分は息子の首を折ることもできたのだから。

「大丈夫だぞ、ミシャ。約束する」
偽りの言葉を口にして、微笑みながら額に、すべすべで温かく柔らかな唇にキスをした。
「パパが上手にやってあげるからね」

第12章 オナーは早朝に目が覚め、暗号のことを思いめぐらすとわかったことがあり、携帯電話に電話をしてみると留守電。その後も作業を続け、来客のベルが鳴ったので警戒しながら応答するとドミトリが立っていました。確信はないけれど、たぶん暗号の一部にはアイシスとか、エイシスとか書いてあると思うと伝えると、ドミトリは「イシスだ」と断言します。

彼女は自分の部下や宮廷内でのやりとりに独自の暗号を使ったメッセージを利用していて、彼女のとりまきたちはそれを覚えさせられていたことをドミトリは思い出します。彼が剣をイシスの心臓に突き刺し、バラバラに引き裂いて、ラファエルと灰にしたのに、何らかの手段で彼女が再生したのか、わかったことをセブンやラファエルに報告します。

ドミトリはオナーの部屋に入り込むと、寝室まで踏み込みます。オナーが追いかけていくとクローゼットを開いて、セクシーなドレスを取り出しています。こんなのが好みだな、とコメントすると夢でも見てればと返されますが、次の瞬間このドレスは男が好むものだな、プレゼントされたのかとするどく追及します。シャレで女友達がプレゼントしてくれたのと釈明。クローゼットには派手な色のものは少ないものの、身体の線のでる洋服が多く、事件前のオナーが感じられます。

ドミトリにしゃれた格好に着替えてくれ、一緒に出かけようと誘われます。行き先がわからないまま、指示に従うのもしゃくにさわり、身体の線のでないルーズなラインの洋服に着替えると君のその恰好をみたらヴァレリアはいまだに君を支配している気分になれて喜ぶだろうなと挑発され、グラマスな体形を強調するぴったりとした服装に着替えて出かけることに。

第13章 行き先はヴァンパイアのバー、エロティークでした。店の前でオナーは行きたくないと抵抗しますが、ドミトリは犯人たちを勝たせるのか、好きにしろ。と一人先に行ってしまい、勇気を振り絞って追いかけていきます。

店内では、血を吸ったり吸われたりするカップルがあちこちにいます。恋人がいない場合に、喜んで血を提供してくれる相手を探すための場所にもなっているようです。そのなかにトミーの親友エヴァートがいるとドミトリが指し示します。エヴァートは相手に痛みを与えて喜ぶタイプで、グルーピーからも嫌がられ、人目のあるところでしか吸血を許されない状態で、いまも膝に乗せたブロンドの女性から血を吸っていますが相手が嫌がっている様子を見せています。そこにドミトリに呼ばれたイリウムがやってきました。ドミトリに気が付いて逃げ出したエヴァートの家に向かってほしいと頼み、自分たちは彼の愛人の家に向かいます。

こじんまりとした家に二人が入っていくと、寝室から言い争っている男女の声が聞こえてきます。彼女は同意していると聞いていたんだと言い訳しています。否定的なことを言い返されて殴った気配にオナーは拳銃を握りしめて踏み込もうとしますが、ドミトリが自制させ、部屋に踏み込むと、女は奥の部屋に逃げ込んでしまいます。エヴァートは言い訳が通用しないのをみてとるとドミトリに襲い掛かりますが、オナーが拳銃で足を撃ち、その場に足止めします。

痛みと怯えで蒼白になったエヴァートは、トミーが彼のイメージではない山荘に携帯なしで閉じこもっている、自分は何も知らないとベラベラしゃべります。オナーは奥の部屋から女性を誘って、家の外に出て話を聞きます。彼女は彼が話した山荘は本当で、自分も連れていかれたことがあると口にしましたが、そこで話せないほど恐ろしい仕打ちを受けたようです。

トミーとエヴァートは親友で、お金に関しては困っている様子がないので才能があるけれど、強さはないので、強い男にみられようと強がっていると。虐待されていた女性に深い同情を寄せるオナーですが、優しい心は消し去ってしまったドミトリは、このことを一言でも話したらエヴァートと共にアンドレアスの世話になることになるぞと脅しつけ、その場を去りますが、オナーに責められて、状況が落ち着いたら彼女に目を配るがおそらく負のスパイラルを断ち切るのは難しいだろうと話しています。

イリウムが、エヴァートの自宅で2番目の事件が近づいている。というような予告めいたメッセージカードをみつけて持ってきました。

そこにサロウから怯えまじりの連絡が入ります。「自分で何をしてしまったかわからないんだけれど、来て」ドミトリは即座にイリウムに指示して現地へ飛ばせ、自分もオナーと車で向かいます。

現場に着くと、死体のそばにかがみこんでいる天使の男性と、目につかないところにいるイリウムがいました。サロウは、監視の目を盗んで少し散歩にでただけなのに、気が付くと男が死んでいたと。男は下半身を露出しています。「自分のことを終わりにして」というサロウにドミトリは状況を確認するまで待てと話します。

オナーが死体を改め、その人物は連続凶悪レイプ犯だということを携帯で確認します。ひとまずヴェノムを待てというドミトリに、オナーが自分が彼女を送っていくから車の鍵を貸してと申し出ます。ドミトリは躊躇しますが、オナーは押し切り、連れ帰ります。

第15章 帰宅後、サロウがのろのろとコーヒーを入れてくれたところに、ヴェノムがやってきます。ちょっと目を離したすきにやらかしてくれて、もっと監視の目を強めないといけないなとか不愉快なことを言ったヴェノムにサロウがコーヒーを投げつけると、一気に険悪ムードが高まり、オナーが「やめて! サロウは片づけをして、ヴェノムは出ていきなさい」と命令すると、ヴェノムは目に見えないスピードでオナーの胴をつかみ「おもちゃのピストルを持っていても役に立つのか」と愚弄しまます。即座にヴェノムの身体を撃ち抜くオナー。人間だったら即死の場所です。「二度と、私に触らないで」このスーツがいくらしたか知っているのかとぼやくヴェノム。私にもその技を教えてほしい!と興奮するサロウ。自分の能力で男を殺したばかりなのだからお前にはそんな技は必要ないだろうと茶々をいれるヴェノムですが、窮地で無力な女性をみたくない、そんな気持ちからオナーはサロウに教えてあげることにします。

タワーに戻っていたドミトリですが、そこにオナーが現れ、思ったよりもサロウは落ち着いていると報告します。また自分の言うことがドミトリにどのくらいダメージを与えるのか、様子をうかがいながら入れ墨の暗号の解読がさらに進んだことを告げます。イシスのために、優美さの賜物、イシスのための復讐、血の怒り と読めたようです。

山荘では、トミーの頭が舌を抜かれ、剥製のように入口に打ち付けられていたようです。エヴァートはドミトリたちに怯えて愛人宅に逃げ込みましたが、このことが彼の命を救ったかもしれません。

すぐに現地に向かおうとするオナーですが、表情から疲れを読み取ったドミトリが家に帰って寝ろ。休みをとれ。このままでは捕食者の餌になりにいくだけだぞと忠告します。眠れないオナーは、あなたがイシスに何をされたのか話してくれたら、私も休むと反抗しますが、最後には説得に応じます。

アカデミーに戻って、アッシュの部屋でくつろぐ親友二人。アイスクリームを食べて、ヘップバーンの映画をみて、アッシュは因縁深いケイジャンのヴァンパイア ジャンビエールからもらったとポイと小さな箱を放って見せてくれます。その中にはアッシュにぴったりのサファイヤとプラチナのネックレスが。求婚されているようです。ケイジャンにプラス1ポイント! 「デートしちゃおうかな?」とオナーがふざけていうと、ドミトリはどうするのと反撃されます。

第16章 ドミトリがラファエルの邸宅の図書館で調べ物をしていると、エレナが入ってきました。ラファエルの弱点になるエレナの人間的な心をドミトリは危惧していますが、彼女の忠誠心については疑いがなく、また彼女のことを自分がどう感じていようと、ラファエルのために彼女を最後の息まで守るとドミトリは決めています。

ラファエルが入室してくると、エレナが立ち上がって彼を迎え、二人の間では声に出されないやりとりがあったようです。「妹のイヴリンに電話しないと」とエレナは部屋を出ていきました。いままでの経過をラファエルに報告すると、ラファエルはオナーは役不足ではないか? と聞かれますが、今の時点では臭跡をたどる必要がないので、十分だとドミトリは応えています。イシスの件が彼の狩りであるように、そちらはオナーの狩りだと。

リフュージの守りにヴェノムを回すが、タワーの担当をどうするかという相談になり、サロウの件でヴェノムが必要だとドミトリが言うとラファエルはアオドハンを充てると判断します。天使の中にいてもあまりに際立つ美しさの彼は騒動を引き起こすだろうとドミトリは予想します。

第17章 オナーが早朝に電話を受けます。ドミトリからかと思ったら、サラの副官からで、死体が上がったんだが、ギルドで扱うべき事件なのか様子を見に行ってくれないかという依頼です。オナーは現場に向かいながら、事件の前の自分が戻ってきている気がします。現場にはサンチャゴ警部がいて、二人で遺体を確認していると、エレナが飛んできます。羽がはえたエレナにあうのは初めてのオナー。感嘆しています。オナーはあることに気が付き、二人に協力してもらって遺体を裏返し、洋服をはだけてみます。

第18章 君が起きていると聞いたぞ、私も起きている。出発だ。とドミトリから連絡があります。チョッパーで到着すると、山荘は惨劇のあとを留めていました。死体を引きずったと思われる入口の階段や部屋中に広がる血痕。おそらく犯人は、トミーに逃げられるかもしれないという偽りの希望を抱かせて弄ったのではないかとオナーは推測します。

冷酷なことをしそうな犯人は、監禁現場にいなかったかとドミトリに聞かれ、オナーは山荘の外に抜け出すと近くに小川が流れています。オナーは目隠しされていましたが、自分がオナーから血を飲む初めての人物だということにこだわっていたようだったこと、あと現代的なしゃべりかたをしていたけれど、時折古風な言葉を使っていたことを思い出します。ドミトリは、計画して実行にうつす手腕から300歳よりは上のヴァンパイアをあたっていると話しています。

ドミトリがイシスのことを語りました。イシスはミカエラのほかには、自分が一番美しく魅力的な天使だと考えていて、実際に周囲からそのように扱われていたのに、ラファエルがあるとき「彼女と寝るくらいだったら蛇と同衾したほうがましだ」と口にしたことを恨んで、彼自身に復讐するのではなく、彼が大切にしているものを壊してやろうと考え、数世代にわたってラファエルが見守り、交流してきたドミトリ家族に狙いをつけたのだと。

イシスが本人を見てみると興味を惹かれ、誘いをかけてもドミトリが断り、最初はそれが気を惹くための彼の誘惑の手段だと考えて、贈り物攻勢をかけ、それらを送り返すとさらに高価な宝物を農民のドミトリの家の前に積み上げるようになり、妻のイングレードは、大天使を拒絶したら大変なことになるのではと心配していたが、その心配があたってしまった。ある日からドミトリは自分の家に帰れなくなり、家族もイシスの部下のヴァンパイアにとらわれたと。

結婚の誓いを破らなくてはいけなくなり、申し訳ないとドミトリがイングリードに詫びています。最初に誘いに乗ってさえいれば、今頃はイシスは自分に飽きて、放り出され、家族は以前とかわらない生活だっただろう、と。イングリードは、家族を守るための戦いなのだから、しようがないと慰めています。

家族からひきはなされ、牢屋に鎖でつながれ、ドミトリは鞭で打たれていたようです。

第19章 ラファエルがドミトリたちのいる山荘に飛んできました。あまりの非人間的な美しさと無慈悲さにエレナはどうやって向き合っているのだろうと不思議におもうオナー。ラファエルに見つめられ、力量を量られているように感じます。新しい事件が起こり、ドミトリと対応するためにきたようで、二人にしてくれ、と命じたラファエルにオナーは私でもお役に立てることがあるかもしれませんと勇気をもって言い出しますがそれを決めるのは私だ、と追い払われます。

お前がいままでに付き合った女全部を合わせたよりも気骨を持ち合わせた女だぞ、とラファエルに忠告されます。オナーに対してドミトリには保護意識が現れているとも。ドミトリは数百年の間、悦びと楽しみしか求めないでいたのに、オナーだけは誰も踏み込ませなかった心の静かな深い部分に響いてくるのです。

ラファエルの持ってきた知らせは、1人目の犠牲者の血が変質していたということでした。ドミトリは天使の毒とヴァンパイアへの転化の秘密の核心を告げることなく、オナーに事情を説明しようと努力します。

タイムズスクエアの死体は、ひょっとしたらお試しだったのではないかと。ラファエルは不死の者が犯人であれば、長い年月のスパンで犯行が行われていてすべてをつなげるのは難しいという見解をしめしますが、オナーは犯人が犠牲者をヴァンパイア化させる手順を完遂できなかったという点を鑑みると、慣れない犯行だったんではないかと感じられると反論し、ドミトリもそれに同意します。

エレナがジェイソンに電話している間、オナーはラファエルに今朝、エレナに事件現場で会ったことを話します。私の伴侶はトラブルを見つけて歩いていると返します。「ドミトリは君の復讐を助けているようだな。」「たぶんヴァンパイアがルールを破っているからでしょう。」「おそらく」「ギルドはこの世界の均衡を保っている。ハンターは獲物にされてはならない」「ギルドに関係ない人間はどうでしょう?」「人間もこの世界の構成要素だ」

倉庫のコンクリートの床で見つかった青年の遺体は足が不自然な形にゆがんでいました。ジーンズをはいているのに、上半身は裸。オナーは同情しつつ、遺体のそばにかがみ口の中を確認しています。ドミトリに懐中電灯で照らしてもらうと、親知らずがありません。25歳以下の人間をヴァンパイア化することは数百年前から10人衆が禁じています。あまりにも若いですが、同じ年にドミトリはすでに農夫として畑を耕していました。背中をチェックしますが、入れ墨などはありません。もうこれ以上マークは必要ないだろう、オナー。充分にメッセージは伝わっているから。

若い犠牲者をみて息子を思い出していますが、ドミトリの痛みを感じてオナーが水を向けても、ドミトリははねつけます。オナーは以前ドミトリから預かったトミーのデータがはいったメモリーカードをヴィヴィクに分析してもらうことにします。

第20章 ヴィヴィクは、シャツが血まみれになった状態で、逃げるエレナを追いかけるドミトリの映像をオナーに見せます。このときオナーは仕事で国を出ていたので、マンハッタンで起こった有名な追跡劇を話には聞いていたけれど、実際の映像をみるのは初めてでした。「これが、君が熱を上げている男だ。エリーは彼の首を切ったが、彼はそれを気に入ったと言っていた」オナーは背筋が寒くなるのを感じましたが、時々論理は通用しないことがあるのよね、と。ヴィヴィクは他にも言いたいことがあるようですが、言葉を飲み込み、気を付けて、助けが必要なら言ってくれたらいいからとサポートを約束しています。

ヴィヴィクが没収したデータにアルゴリズムを走らせ、e-mailの自動検索をかけてくれています。オナーがとある無題のメールに惹きつけられてみてみると、「招待状を受け取った?」というメールがありました。「電話する」「こんなに生きてる実感をもったのは数百年ぶり」「獲物を狩りだす喜びを忘れていたよ」彼らはとらえられていた女性を弄っただけの臆病者。あれは狩りなんかじゃなかったとオナーは思います。

トミーのメール相手はIDを隠しもせず、判明します。ヴィヴィクが数分捜査してわかったのはジュエル・ワンという人物。写真をみると中国系の女性ヴァンパイアで、年月が人間らしさを拭い去り、まなざしは黒いダイヤモンドのようのよう。「貴女を壊すのは楽しいわ。壊した後には、私のことをご主人様と呼んで、触ってもらうのを乞い願うようになるでしょうね」といった彼女を思い出します。

オナーは復讐のため飛び出して行こうとしますが、ヴィヴィクは相手は450歳のヴァンパイアだからと心配します。彼を振り切って飛び出しますが、2時間後。目的地手前の道路でヘリコプターが停車しています。「どかしてちょうだい!」と激怒しますが、「頭を使え」とドミトリは動じません。ジュエルはよく訓練された犬を敷地内に放って、武装ガードマンを4人配置している。なぜヴァレリアのときは冷静に対処できていたのに、今回君の怒りは突き抜けているんだ? とドミトリは聞きますが、ドミトリがオナーをかばってヘリコプターからの視線をさりげなくさえぎってくれたことに気が付いた時、感情の堰が切れます。

ジュエルは最後の瞬間までは傷つけなかった。恥ずかしさと、人間らしさはお腹の底でしこりになっていて、オナーの彼女への嫌悪は深刻なものでした。おそらく主犯のゲームの最初の目的は彼女を吸血で歓びを与えることだったんだと思う。すべてが力とコントロールの証明だった。ところがオナーを壊すことに失敗したことで、彼女に悲鳴を上げさせることに楽しみを見出すようになった。でもジュエルは私の身体をもてあそび、心の深い部分を壊して、プライドをずたずたにしたの。

彼女はドミトリの抱擁を受け入れ、胸に顔をつけます。事件後に彼女が誰かに初めて抱きしめられ、それに耐えられた瞬間でした。「彼女が大嫌い、誰よりも」ドミトリは、自分が同じことをジュエルにやって、仕返しをしてやろうかと提案しますが、オナーはそんなことしないでと。もしやったら、貴方の両手首を撃ち抜くわよというとドミトリは胸をふるわせて大笑いしていました。

そこから先はドミトリが車を運転してジュエルの邸宅に向かいますが、逃げようとしたジュエルとボディガード一行とすれ違います。ドミトリの命令にもかかわらず、一部のボディガードが抵抗してきたため、ドミトリは運転席にいるヴァンパイアを力づくで引きずり出し、地面にたたきつけ、撃ってきた相手はなぎ倒します。オナーも銃を蹴りつけ武装解除に強力します。あっという間に片が付き、ジュエルの乗っている車に発砲します。ドミトリは車の天井に乗り、天井を引き裂き、ジュエルの髪を鷲掴み、車から引きずり出しました。

第21章 ジュエルをレンタカーで荒っぽく道路で足止めしたドミトリたち。この件のあとも生きていたかったら、この場を離れて屋敷にもどってろ。逃げて自分を喜ばせてくれてもいいぞ、とドミトリが言うとボディガードたちは黙って立ち去ります。撃たれたジュエルは血を流し、足元がふらついていますが、エレガントさは失っていませんでした。「ここにいたの、カワイ子ちゃん」とオナーをあざけったので、オナーはピストルを打ち込んでやろうかと思いますが、貴女を殺して楽させてはやらない、と車に乗り込みます。ドミトリ、あなたの魂のひとかけらでも彼女に与えてはダメ。と言い置いて。

ジュエル・ウォンはドミトリの薄笑いに震え上がりますが、取引しようと持ちかけてきます。ドミトリは、取引するまでもなく、君が知っていることはすべて話すことはお互い分かっているだろうとはねつけます。私は450歳の経験あるヴァンパイアなのに、ちっぽけな人間のために私を傷つけようっていうの?
と言い募ると、ドミトリは殴りつけ、ジュエルは木に激突します。「話せ、そうしたらアンドレアスに特別な追加の扱いを命令しないでやってもいい」というドミトリにジュエルはすすり泣きで答えますが、オナーは演技だと見抜いています。彼女は一種のモンスターだと。ただし、ドミトリ自身を損なわないよう、「なんて言ったか覚えているわよね?」と彼にも釘を刺します。

ジュエルは招待状をもらったこと、招待状は家の書斎にあること、トミーに誘われてその場にいたことなどを話します。私たちがすでに知っていることしか話してないわとオナーがいうと、「黙れ、人間ごときが!」とジュエルがにらみつけます。ドミトリは「彼女に少しでも触れたらだめなのか?」とオナーに伺いをたてますが、笑顔で振り向きナイフを取り出してジュエルを怯えさせます。ジュエルは「エヴァートが知っているはず、トミーといつも一緒だったから。でも主犯は彼らじゃない、これを計画した彼は注意深く自分を隠していてたけど、あるサークル内では、彼は昔タワーで働いていたんじゃないかって噂になっていた」

あるサークルって誰なのと聞かれて3人の名前があがります。さらに15分尋問しますが、これ以上なにも知らないとわかると、ドミトリはジュエルが悲鳴を上げる暇もなく首を折りますが、これくらいでは死なないようです。ヴェノムがチョッパーで彼女をアンドレアスのところに運ぶとオナーに説明します。

彼女が拷問を受けると思うとワクワクするかと思ったら、そんな気持ちにはなれないと話すオナーに、これは永遠の命を持つものに必要なことだと話します。綺麗に殺すと、転化したばかりのものが恐れを知ることができず、にたような事件が多発するようになってしまうからと。年長のものにとって死は恐怖ではない、しかし痛みは・・・すべての者は痛みを恐れるんだと。早くこの事件が解決してほしいと口にすると、そうなるさとドミトリが応えます。

第22-23章 ドミトリは彼女自身に身に着けている武器を一つずつ外させ、食卓に置かせます。ドミトリもまた、身に着けた武器を外し、食卓の上は武器庫のよう。オナーは静かにドミトリが腰かけて広げた足の間に身を落ち着けます。オナーのために、捕食者の本能を押さえつけ、ドミトリはオナーの好きなペースで進めさせます。オナーはドミトリの身体にはしる緊張を楽しみながら、ゆっくりと探索していきます。

壊れものでもあつかうように自分に触れてくるオナーのしぐさを見て、自分が親密さをわかちあった唯一のイングリードを思い出します。「なんで壊れものみたいにキスするんだい?」と聞くと、イングリードは「私はキスしてるんじゃないの、愛しているのよ、旦那さま」と笑っていました。

オナーとドミトリの熱はさらにヒートアップしていきますが、ドミトリが自分にまたがるオナーを自分のほうに強く引き寄せたとたん、オナーが食卓においたナイフを手にして部屋の反対側へ飛びすさっていました。強く感じやすい彼女に深い恐怖の爪痕が残されていることにドミトリは内心激怒していますが、オナーに対しては穏やかに次に愛し合うときはもっと遠くに武器を置かないといけないなと声掛けをします。数秒後、オナーが我に返り、ナイフを投げ捨てます。

恐怖心を振り払い、ドミトリのもとに戻るオナー。「女性は私を傷つけたがるが、キスを罰だと思っている奴はいないぞ」とドミトリがからかうと、オナーはドミトリの胸に飛び込んで、自分をこんなに弱くしたヴァレリアや他の犯人が許せないと語ります。ドミトリは自分が香りの能力が発達している過程で、ハンターを香りで誘惑できることを学び、自分自身がそうしたいからだと思わせることもできるようになったと話します。ただ簡単すぎて飽きたと。香り自体には中毒性はないが、ドミトリ自身にドラッグのようにハマってしまい、なんど追い払っても戻ってくるようになってしまったと。

イングリードと結婚した夜の彼女がどんな風だったか、熱い思い出がドミトリの夢のなかにあらわれます。

第24章 家まで迎えにきたドミトリ。朝食を食べたかと聞かれて、あなたは誰から血を飲ませてもらったのとオナーは聞いてしまいます。嫉妬深くて独占欲の強い女だと思われてもいいのか?とドミトリはからかいます。昨日は別れた後でゴージャスなブロンドから誘いを受けたとさらにつづけたので、オナーはブロンドの罠についてはカルメンで学習したかと思ったけどと逆襲します。

怒り心頭のオナーですが、自分の気持ちをみつめ、怒りが情熱にかわります。「いま私たちは一線を越えようとしている、私は絶対に血液の補給でも恋愛上も、別の恋人を認めたりしない。それができないなら、ここで二人の関係を終わりにしましょう」と。ドミトリをあきらめるのは自分自身の何かを殺すことになるだろうけれど、誰かの首に彼が頭をうずめているのをみることのほうがもっとつらいことになるとドナーは考えています。私たちの関係がどれだけ続くかわからないけれど、たぶんドミトリほどの男性を自分は永遠につなぎ留められないとしても、絶対にわたしだけ。

彼の胸にあてられたオナーの手を彼は上からにぎり、自分に押し当てます。「ブロンドの魅力は褪せたみたいだ。この関係が続く限りは君しかいない。お互いに、だぞ」誓いとして口にされました。

オナーは少しドミトリをからかう気分になり、ファスナーに手を伸ばします。ドミトリはフェラーリの幌を上げるボタンを押し、ガラスを曇らせ、熱い時間を二人で過ごしていました。

第25章 オナーといてイングリードの思い出が蘇ることは、記憶が贖罪と考えるドミトリにとって嬉しいことではないようです。オナーにきつく当たりますが、オナーも私は装飾品のようにはならないと負けていません。移動しながら行方不明になっているという3組目の犠牲者について話しています。ヴァンパイアに血液を供給する血液ジャンキーたちはペアで行動することが普通だと。どちらかがヴァンパイアの好みに合うかもしれないし、運が良ければ交代で吸ってもらえると。ダッシュボードのなかには、生きていたときの被害者たちのものと思われる沢山の写真が入った封筒があり、最近血液を補給したという話を聞かないジアナという女性のもとにドミトリは向かっているようです。

第26章 ドミトリとオナーがジアナの邸宅に着くと、やせ細った女性が出迎えてくれました。オナーは、監禁中に訪問してきた彼女が怯えていながら、何か欲しいものがないか唯一自分に尋ねてくれ、水をくれたことを思い出しました。他の犯人は誰もしてくれなかったことでした。彼女はすぐに招待状を差し出し、すぐに露見して大変なことになると言っても聞き入れてもらえなかったと。ジアナは、まだ契約下にあった若いころ、エイモスという子供をもうけており、彼自身の希望でヴァンパイアになっていて、高い知能でタワーに仕えていたと。ジアナがいうには、エイモスはヴァンパイア化されたときにおかしくなってしまい、いまでは完璧に狂気に染まってしまっていると。ヴァンパイア化される人のなかには一定数狂気に染まってしまう人がいるというのはハンターの間で噂になっていましたが、はっきりと口に出して認められたのを聞くのはドナーにも初めてのことでした。

母として、できる限り殺害を避けようと努力してきたようですが、無力でしたと。ドミトリは彼女に対しては礼を逸せず対応していて、彼女が息子を守りたい気持ちはわかるけれど、彼を止めなくては。過ちが繰り返されるとジアナに話します。ジアナはドミトリの胸で号泣します。ただジアナも、向こうから居場所の連絡がくることはあるけれど、いまいる場所はわからないようです。ジアナが家に閉じこもり、自分を罰し続けていることにオナーは気が付き、今の時点では彼女を罰したいという気持ちは湧いてこないとドミトリに伝えます。

第27章 エイモスの情報を求めて、ジアナが天使の邸宅街にもつという屋敷に二人で向かいます。そこを見張らせているドミトリの部下によれば、人の出入りはないということですが、二人で確認することにします。

扉を開けるとかすかな腐敗臭が漂ってきます。書籍が多数並べられ、座り心地のよさそうな椅子が中心におかれ、居心地よく整えられた私室に踏み込むと、椅子の置かれた方向が奇妙でした。ドミトリが向けられた壁を開けると、隠し部屋には冷蔵庫がおかれ、遺体を並べた後で部分的にミンチにしたような状態のパーツがありました。

オナーも見た途端絶句していましたが、どうやら2番目に見つかった死体の一部がここにありそうだということで、サンチャゴ警部にすぐ連絡を取っていました。

母親を自分のゆがんだゲームに招待するということも理解を超えているけれど監禁事件の犯人のプロファイルとこのバラバラ事件の被害者にぴったりくるものを感じないとオナーがいうと、ドミトリがおそらく、息子のジアナへの愛情はゆがんでいておそらくオナーはジアナのタイプだったんだろうと。数年前の夏にジアナに紹介された友人がオナーに似たタイプの女性だったからとドミトリが言っていました。

第28章 タワーを出ると、二人でオナーの家に向かいます。ハンターは注意深く自分の巣を作り上げるので、例えばアシュウィニの部屋は色の洪水。色とりどりのインテリア小物であふれています。オナーのテイストはもう少し落ち着いたものでした。彼女には狩りやあちこちに出掛けたときに撮りためた写真があり、壁にはたくさんの写真が飾られていました。ドミトリが玄関に飾られたある写真をみて顔色を変えます。「野生の花だ。この写真は前にはなかったものだな」数年前ヴァンパイアを追いかけてロシアまで行ったときに、偶然みつけた草原だったようですが、この場所の記憶が何か月も彼女の脳裏をちらつくようになり、次第に起きたときにも眠る前にも目に留まる場所にその写真を貼ることにしたということのようです。

この場所はこの世からなくなったはずだったのに、なぜ、どうやってこの場所を見つけ出したんだ? と激昂するドミトリ。偶然通りかかっただけの場所だとオナーは言いますが、実はなにかに導かれるようにしてたどり着いた場所でした。なぜか心がとても痛くて、あんなにきれいな場所はみたことがなかったから。

ドミトリは、オナーとの関係がすべては自分を嵌めるゲームと思い込み、代償を払ってもらうと襲い掛かります。ドミトリの顔からは表情が完全に抜け落ち、オナーを壁に押し付けると、彼女の抵抗もむなしく、手首を自分の腕で拘束してしまいます。オナーの目をのぞき込むとそのまなざしの中にはもう優しさや笑いはなく、生き抜くための本能しか映っていませんでした。怖がっていたオナー、絶対にあなたのことを傷つけたりしないと言っていたオナーのことを思い出し、ドミトリは押さえつけていた手を放しますが、そのとたんオナーに強烈に肘と蹴りで反撃され、飛ばされます。

激怒したオナーは泣きながら、「あなたなんてきらい、嫌い、大嫌い!」と胸を両手でたたきますが、叩かれたドミトリも自己嫌悪にどっぷり浸っています。オナーのなにがドミトリの中の激怒を引き出してしまったのか、自分でもわからないでいます。オナーに言えるとしたら1000年以上口にしていなかった言葉しかありません。「申し訳ない、オナー。許してほしい」

ドミトリがオナーをねじ伏せたことは、オナーの信頼と判断力を粉々にし、事件後に建て直した自尊心も粉々にすることで、許せる自信がありません。ドミトリは静かにオナーを治療すると、キッチンで食事を作り、食べろと言ってくれましたが、オナーの心は凍り付いたままでした。彼は自分の心を手に入れたうえで、魂を砕き、足で踏みつけにしたようなものだから。

「出て行って」と言われ、追い出さないでくれ、とドミトリはオナーの足元にひざまずきます。抱きしめられ、お腹に額をあてられるとオナーはとめどなく涙を流します。「許してくれ」この返答は一生を左右するだろうとオナーはわかっていました。崖っぷちに立った今、ひとたび過てば、粉々になってしまう。もしくはずっと夢見ていたホーム、帰る場所ができるかもしれない。

いまでも私のもの、私のドミトリのまま。
傷ついて、かわってしまったけれど。

オナーは心のなかで響く声に静かに耳を傾けます。いまではこの声にも親しみを感じるようになってきました。

「別れたくない」「それでも手放してもらいたいと言ったら?」・・・君が望むなら。

第29章 ドミトリのこととなると、自己保身が働かなくなるオナー。「ここにいて」とドミトリを抱きしめ、抱きしめ返してもらいます。二度と同じことは繰り返さないとドミトリは誓います。

怒った理由を尋ねるオナーに、写真に写された景色は今ではラファエルしか知るはずのない場所だったからと説明を始めます。オナーは自分の心の中に子供の喜ぶ声が響いてきて、あそこが悲劇だけの舞台ではなかったとなぜかわかります。

あの場所であったことが忘れられたらと思うこともあるが、自分はすべて覚えていると。二度と忘れられない記憶もあるのだとドミトリは話します。昔の妻が今の自分を見たら喜ばないだろうと。自分がオナーに与えられるものはほとんどない。でもオナーへの気持ちは、妻が死んでから初めて感じる気持ちなんだと。

第30章 「君から血を吸いたいと思っている、でも君が間違いなくそうしてほしいと思わない限りは絶対に吸ったりしない」と約束され、熱い時間を過ごす二人。ドミトリに血を差し出し、二人の絆はさらに深まっているようです。

第31章 ジアナの邸宅からエイモスの身体の一部と、おそらく庭で鉄の釘によって手を地面に打ち付けられ、痛めつけられた血痕が発見され、二人は現場を確認しています。エイモス自身はその場にいないものの、大怪我を負っていることが予想され、捜索されていますが見つかっていません。

ドミトリは現場の様子から、エイモスが気絶する前に片手をはずし、ジアナを殴り倒して逃げ出したのではないかと考えますが、現場の様子となんとなく一致しないものを感じます。オナーは、なぜ突然ジアナが暴力的になり、罪を償わせようと考えたのかと思案しますが、ジアナが「彼は、私を女として見る目つきだった」と言ったため、彼女の限界を超えてしまったのだと納得します。

ドミトリはエイモスの血から鎮静剤の匂いを感じ取り奇妙に感じています。鎮静剤を使ったとしたら、突発的な事件ではない。ジアナの協力的な態度といい・・・。何が起こったのだとしても、これは単純な罪の償いのための処刑とは思えない。母性的なジアナへの先入観を捨ててオナーが現場を見てみると、残された部位から時間をかけないとできない傷が見受けられ、冷たい認識がしみ込んできました。彼は猿轡をされて拷問されたんだわ、それを楽しむ母親によって。

ドミトリに武器を取り上げられ、手首を捕まれたジアナはオナーに助けを求めますが、彼女のまなざしには深い痛みと悲しみ、そしてその奥には最初見抜けなかった押し殺された邪悪さがただよっていました。
エイモスは母に不死化され、彼に狂気があったとしたらそれはジアナから遺伝したものだったのだとオナーが気づきます。ジアナが考えて息子が実行したのだと。

「バカな息子にはおとなしくしていろと言ったのに、さらに2人のハンターの誘拐を計画していたの」それでジアナは拷問の準備をして、彼を処刑しようとした。「地下室であなたにやさしくするのは本当に楽しかったわ。貴方の信用を得ようと計画していたの。そのあとであなたをいただけば、ますます苦悩が深まって楽しみも増すでしょ」「もう十分だ、エイモスはどこだ。お前は楽な死に方はできない。ラファエルに裁かれる」ジアナは蹴りたて、叫び、抵抗します。

彼女が何をしたのか、まずは調べなければいけないが・・・とドミトリは手首をしならせ、一撃でジアナの首を折ってしまいます。目の前でみる彼の暴力的な世界はショックでしたが、彼女自身も無垢ではなく、彼と生きていくならなんとか折り合いをつけねばならないのです。ジアナの遺体を無造作に他のバンパイアに投げ渡したドミトリに「ドミトリ、私に優しくしてくれる? あなたのやり方についていくのはとても難しいの。ついていけないと思ったら、私はあなたを止めるから」と告げます。

ドミトリはジアナの邸宅の雑事をかたずけ、タワーに戻ってエイモスが逃げ込む先があるか調査するから、ジェイソンに送ってもらってくれとドミトリは指示しますが、オナーはエレナに協力してもらい、現場の匂いの調査をすすめます。車で立ち去ったのではないかと思われましたが、簡単に足が付く車で移動するほどエイモスは馬鹿ではないだろうとオナーは考えます。ただエレナは不死の者がどれだけ傲慢さで周りが見えないかを知ったら驚くわよ、と反論します。エレナは「姉妹の一人に朝5時までつきあわされたの。愛には打ちのめされることもあるのね。」「もし危険な男と石をぶつけたら届くほどの近い距離にいるんだったら、不死者の世界は醜くもなると忠告させてもらうわ。もしドミトリを縛り上げてフォークで拷問する機会があったら、絶対に電話して。」以前ドミトリに椅子に縛りつけられたことをまだ許していないようです。

エレナは飛び去り、オナーはどうしても記憶にひっかかる匂いがあり、ジェイソンと屋敷内を確認することにします。優雅なしつらえの屋敷内には暴力の痕跡がそこここに残っていました。ラファエルが彼女の記憶を取り出せば、すぐに事の次第がわかるでしょう、とジェイソンは助言します。ラファエルにその能力があると知っていて、どうして彼のそばにいられるの?と聞かれて「信頼です。たぶんドミトリに癇癪をおこす力があると知っていてもベットを共にできる類の信頼」とジェイソン。

「ドミトリにとってのあなたがどんな存在であろうと、カルメンやその他の女性とは違うはずです。彼は他のだれかのようにあなたを捨てたりしないし、貴女が去るのを許しもしないだろう。それにはもう遅すぎる。そのことを理解していますか?」
「警告しようとしているの、それとも彼を守ろうとしているの?」
「両方の理由でもいいでしょう」
「警告は不要よ、私は彼のありのままをみている」それに彼は私の心を握っているの。
「貴女のような経験をしたら、普通であれば死んでいるでしょうね」
「死んでしまいそうだったわ。でも私は卑怯者たちを勝たせたりしないって決めたの」

第32章 帰ろうとしたところで、オナーが壁にあるジアナの肖像画にAという血の書き込みをみつけます。更に丹念に屋敷内を探索し、エイモスの寝室らしきところで乱れたシーツや脱ぎ捨てられた革靴をみつけます。エイモスは裸足だったんだわ。彼の血の足跡は鮮やかでした。

「もし事件の真相が明らかになったら、厳罰が予測されるの? もしそうなら、ジアナの強い動機になるはず」ジェイソンによれば、間違いなく厳罰。それも永遠に続く類の。不死の者たちも震え上がるような。例えば入れ墨のような。

「なんて甘くておいしそうなんだ」
「やめて、おねがい!」彼女は悲鳴を上げますが、彼女は押さえつけられ、無力でした。
笑いが起こり、あつく濡れた音がして、彼女の赤ん坊の悲鳴が空気を引き裂きました

オナーの意識は自分の喉にこもった自身の恐怖の悲鳴でわれにかえると、ジェイソンの羽を押しのけ、屋敷の外に飛び出します。おぞましい記憶は夢ではなく、記憶のようでした。彼女の胸は耐えられないほど痛み、女の赤ちゃんの悲鳴は彼女の魂を粉々にしました。

彼女を監禁した犯人たちの追跡は最終局面を迎えていました。オナーがギルドに戻るというと、ジェイソンは門で車が待っていますと伝えます。「ドミトリは古のヴァンパイアで、自分の女を守ろうとするのは本能ですから」というと飛びたち、すぐに見えなくなってしまいました。

彼の女。

ジェイソンが決定的な発言をしたということが、ドミトリがどういう思考回路なのかというヒントを与えてくれています。この問題はあとでかならず解決しなくてはならないけれど、いまは大切にされているという感覚を楽しもうと考え、車に乗り込みます。

ドミトリとラファエルは、ラファエル邸の裏の崖を眺めていました。ジアナの件を報告すると、「私は間違っていたでしょうか?」と尋ねます。ドミトリは、むしろ予想が間違ってほしかったのです。母親は子供をかわいがるものだと信じていたから、イングリードなら最後の息までミシャとカテリナを守ったはずだからと。

お前の妻は娘を守ろうと戦ったぞ、ドミトリ。ちっぽけな人形みたいなもんなのにな。

いや、お前は間違っていなかった。ジェイソンの調査もそれを裏づけしている。ジアナについては、私が始末するとラファエルは言いますが、ドミトリは自分がしますと申し出ます。オナーをひどく傷つけたエイモスを生み出したのはジアナだから。そしてエイモス自身についても、考えるたびに視界に血がかすんでみえるほどです。

ラファエルさえも、イングリードの死後に起こった真実を知らないのです。彼が自身の息子の首をおったあと、心を亡くしたと思っていたこと。実際にはそうではなかったけれど、確かなのは、絶対にオナーをあきらめないということ。

もし私になにかあったら、再婚までどのくらい期間をあけてくれる? ワンシーズンくらいは我慢してね。彼はからかわれているとわかっていましたが、このことだけは冗談にできませんでした。
「絶対に、再婚はしない」
「そんなこと言ってはいけないわ」
「おれと別れたいのか?」彼の存在理由なのに。
「絶対に別れない。でももしも一緒にいられなくなったとしたら、あなたに寂しい思いをしてほしくない」
「魔女め、俺は自分の心のなかに他の女の誰も入れたりしない。君が俺を見つけてくれるのをずっと待ってる。あまり待たせないでくれ」

「私は彼女を裏切ることになるんでしょうか?」
「おまえのイングリードは寛大な女性だった」
「やきもち焼きでしたけれど」
「彼女は私がお前を誘惑していると勘違いしたときに、ものすごい視線でにらんできたことがあったぞ」
イングリードは彼らが友人同士だとわかると、家族の夕食にラファエルを招待したのでした。
「あんなに笑ったのはあれ以来ないですね。」
「楽しい思い出だ。永遠に忘れられない、消え去らない記憶のひとつ」

誰かが彼女を覚えていてくれる、そしてドミトリの魂にはミシャとカテリナが焼き付けられているけれど、今ではハンターも。

許してくれ、イングリード。

「カリストスが糧にして、変化させようとしていた男の子は生き延びるでしょうか?」
「彼は若く、頑張っている。どの程度の害をこうむったかは今の段階では不明だ」

もしカリストスが狂気に陥っていて、ドミトリに復讐しようと考えているのなら、オナーは標的になるかもしれない。より傷つけやすく、殺しやすい。

今回こそは守ってみせる。

第33章 サロウはオナーを歓迎してくれました。ヴェノムが見守るなか、護身術の練習です。「相手になろうか、優しくするからさ」とヴェノムに誘われますが、サロウが着替えを終えてもう来るからと断ります。「ドミトリはもっと洗練された女性を選ぶと思っていたんだけどな」という嫌味なからかいに、「あなたは養子先にいた8歳の男の子を私に思い出させるの。私が喜ぶと思って、お風呂上りに泥団子を投げつけてきた子。私が泥団子でやり返したらもう面白いと思わなくなったみたいだけど」ヴェノムは数百歳年上のはずなのに、彼をみていると自分がものすごく年取った気分にさせられるなんて不思議だとオナーは感じていました。

サロウが来ると「ヴェノムをよこすなんて、ドミトリは私のことが嫌いなのかも」とオナーにこぼします。ヴェノムはサロウの怒りの限界を探ろうとしきりに彼女を刺激しているようです。「気にしているとわかると余計喜ぶから、無視して」と基礎的なレッスンをはじめます。

20分ほど続けるうちに、サロウが突然倒れ、ヴェノムは目にもとまらぬ早さで駆けつけます。「飲め」と左手首を差し出しますが、サロウが拒むので、飲まないなら無理やり飲ませた後で甘ったれのガキにふさわしくタワーで24時間監視させるぞと脅したため、サロウは激しく手首にかみつき、糧を得ます。
さらにからかい続けたヴェノムに逆上したサロウはヴェノムに襲い掛かりますが、かわされつづけ、相手になりません。ドミトリとしばらく眺めていますが、しまいにオナーは割って入り、ヴェノムを去らせ、サロウにお説教します。逆上はあなたの命取りになるわよ。スパーリングよりも、訓練が必要かもね、と。気持ちを無理にでも落ち着かせようと努力するサロウをみて、瞑想を勧めます。

「エレナが会いたいって言ってくれているみたいなんだけど、彼女がウラムから助けてくれたってわかっていても、彼女は翼をもっていて・・・会えない」エレナはわかってくれるし、一人でいるのはよくないとオナーは家族に会うことを勧めますが、サロウはためらっています。家族はウラムの事情を知らないから、私の変化に気が付いたら拒絶されるんじゃないかと思うけど、本当に素敵な人たちなの。ママは私が来ていいと言ったら毎日でも来ると思う。なら、来てもらいなさい。家族の絆はあなたの戦いの助けにかならずなるから。サロウが抱きついてくると、抱きしめ返し、その様子をながめるドミトリと視線をかわします。サロウはドミトリの観察の対象というだけでなく、もう彼らのものだと。

サロウの家から車で帰宅途中、電話があります。「カリストスだな?」ネハの宮廷で情報を集めたジェイソンによれば、カリストスは男女問わず魅了してまわる美しさに磨きがかかっていたが、気質は以前とかわりなかったと。「言う通りにしないと、ここにいるかわいい天使がゆっくり痛ましい死を迎えるぞ」おまえの車を追跡しているが、近くでちょっとでも翼がみえたら、こいつを殺す。「おまえのもっているニューヨークの建物のひとつにプレゼントを用意したんだ」

そばにいるオナーに事情を説明すると、イリウムに連絡を取ります。ラファエルは会議に出掛けていて、ジェイソンは帰ってしまい、イリウムは目立ちすぎ、他の者は信用できないため、イリウムがラファエルに事情を急報することに。

『サイア、いまからいう住所3か所をイリウムとチェックしていただけませんか、私は残りのひとつに急行します』とラファエルに心話で伝えると、強引にフェラーリをUターンさせます。

第34章 車を門の外に乗り捨てると、ドミトリは長い三日月刀を取り出し、背中に背負うと、「俺の背後にいろ。カリストスはもう消えているだろうが、絶対とは言えない」と言いつけます。「あなたをカバーするわ」とオナーがいうと、「銃で撃たれても俺にはなんでもないが、君は死んでしまう」オナーは反論せず、二人は動き出します。

部屋に入り込むと、そこは静かでしたが、壊された天使がいました。男の子といっていいほどの。
『ラファエル、聞こえますか』『数分でつく。現場を見せてくれ』ドミトリはドミトリの目を通して天使の様子がラファエルに伝わるよう精一杯精神をひらきます。『人工呼吸だ、ドミトリ。それ以外助からないだろう』その場の警護をオナーに任せると人工呼吸を始めます。ラファエルが5分ほどで到着し、ためらいなく汚い床に膝をつき、ドミトリと呼吸を送り込む役を代わります。大天使の呼吸は信じられないパワーを持っています。

「彼は生きられるでしょうか」
「大丈夫だ、ただし人間世界にはない類の治療が必要になるだろう」
「リフュージへの搬送手段を整えます」
「いや、私が運んでいく。私たちはここを3日ほど離れる」
「エレナは?」
「彼女は私の心だ。一緒に来る」
「あなたの街は私が見守ります」

ラファエルが行こうとすると、オナーがひきとめます。「待って。この子、なにか手に隠しもっているわ」ドミトリがこじあけると、2枚の楓の葉っぱでした。オナーが近づいてみるとなにかが彼の手に描かれていることに気付きます。「エリス」ラファエルの声が鋭くなります。

「ネハの伴侶の? 数百年誰もあっていないという話ですよ」「ネハはこの地に邸宅を持っていないが、エリスは隠遁する前に好んで滞在していた邸宅がある」この隠遁については噂があり、ネハを裏切ったため300年罰を受けているというものです。ネハの宮廷におけるカリストスの立場でエリスと接触できたとも思えないが、イシスの恋人は知性だけはあったはず。おそらくエリスよりも。

「カリストスはエリスの邸宅を自分の基地として使っていたに違いない。いけ、必要な人員は使ってもらってかまわない」
「もし事件の背後にネハがいるなら、不用意に街をあけられません。ネハの罠かも」
「私には自分の街を守れるだけの力がある、ドミトリ」
「しかしネハは侮れません。私は一人で向かいます。独力でカリストスに対処できますから」
「それならイリウムを連れていけ。副官を失えない」

オナーはドミトリに同行を主張します。「もし私をおいていくつもりなら、考え直して。あなたはわたしのものなんだから」優しい心を持つ彼女は自分の心であり、彼が守らなくては。彼女が彼の弱みになっているとしても。「来い、化け物を住処に追い返してやるぞ」

セブンがヘリコプターを利用するとき、おおむねヴェノムが操縦することが多いようですが、ドミトリも操縦できるようです。イリウムは天使のなかでも飛翔の能力が優れているため、すでにエリスの邸宅に向かっていて、オナーはハンター仲間に頼み、現地を探ってもらっているようですが、邸内からは何も聞こえてこないと言ってきているようです。

「カリストスはすでに若くはないから気配を悟らせていないのだろう。間違いなく彼はあそこにいるはずだ」「どういう結末にせよ、今夜終わるのね。あなたに初めて出会って息を呑んだ瞬間から、あなたは私の一部になったみたいな気がする」彼は彼女の腕をとると唇までもってきて拳に押し当てました。彼女は自分にまた妻帯者の気分にさせ、強くなった気分にさせてくれる一方で、美しさと恐ろしさを感じ取る能力も蘇らせてくれる。彼は自分の味方の人間のために血を流すだろうし、もし彼女が望めば自分の胸を切り開き、彼の名前を聞くと世界が震撼するまで悪魔も敵も平らげてみせる。でも彼は二度と彼女を悼んだりしない。人は2度、あのような喪失に耐えることはできない。

エリスの邸宅に着き、『イリウム』と心話で呼びかけると返答がありました。『屋敷の探索をしている。静かだが、カリストスがいるかどうかはわからない』『いないとしても、じき戻るだろう』

屋敷を取り囲む楓の森を抜けると、壁にツタがはい、ガーゴイルが守る立派な屋敷が見えてきました。近づいていくと、出入り口付近に最近頻繁に出入りした痕跡と思われるツタが避けられた箇所があり、二人はそこから屋敷に踏み込みます。

第35章 窓ガラスからチェックしていオナーがろうそくの炎のようなものが一瞬ゆらめくのを見ます。ドミトリはイリウムを呼び寄せます。オナーはおそらく扉の奥にはカリストスがいるだろうから二手に分かれようと提案します。

「怪我するなよ、オナー。そんなことになったら次に目覚めたときには牙が生えてるぞ」
「テストしたことないのに」
「現役のハンターの血液を入手するのは造作もないさ」
「プライバシーって言葉、聞いたことある?」

「俺から離れてろ、カリストスは君を連れてくるとは考えていないはずだ。そうそう、プライバシーっていうのは現代的な観念だ」オナーが部屋の隅に下がると、そこにカリストスが現れ、ドミトリと会話を始めますが、捕食者同士がお互いのそばを歩き回っているようです。

カリストスはこの歳月ではるかに美しくなっていて、ドミトリが香りを武器として操るように、美貌と身体を武器として操っています。「上の階には大きなベッドがあるぞ、すぐに使えるようになっている」一言ひとことに誘惑が滴っていました。イシスさえも、彼を拷問していないときは魅せられていました。若い人間の男性やヴァンパイアたちが甘く誘われ殺されてしまったことも不思議ではありません。

「バンパイアを作るのに失敗したんだな」「軍隊を作ろうと思ったんだが。君の家の玄関先にプレゼントを置くのは楽しかったよ。それに気が付いたんだ。君をやっつけるには軍隊なんか必要ない、君が愛する人を捕まえて、君の前で殺して見せればいいってね」

「俺たちがおまえを発見したとき、お前は自分の血だまりのなかに倒れていた。イシスはお前の背中が裂けるまでむち打ちをして、悲鳴をあげさせながらお前にまたがっていたっけな」
「彼女が与えてくれた悦びをお前は知らないんだ」
「お前は彼女にとってはおもちゃだったのに。イシスをまだ愛しているのか?」
「ああ」
「それならもういうことはない」ドミトリは三日月刀を抜きます。
「倒してみろよ、お前が残りの人生で、彼女が俺に疲れるまで使われて、ゆっくり痛ましい死を迎えたと知りながら生きるのかと思うと嬉しいよ。あと1時間早く到着していればよかったと後悔するなんて、かわいそうにな。最後にお前の名前を叫んでたぞ」

ドミトリとカリストスは何度か剣をうちあい、カリストスの血が壁に飛び散ります。オナーがカリストスを撃ち、彼女のほうに向かっていくのをみてドミトリは怪我を押して膝を蹴りつけようとしますが、カリストスは窓から外へ飛び出していきます。

「オナー!」
「大丈夫、行って!」

同じ穴から飛び出すと、着地したドミトリの前に血だらけのカリストスがいました。賢いな、ドミトリ。俺に手持ちのカードをさらさせるとは。口笛でハウンズの群れを呼び出します。群れの一部は家に向かいましたが、おそらくオナーの匂いに誘われたのかもしれません。カリストスは高笑いしています。

「中にいるんだ!」とドミトリは叫ぶと、犬を切りつけます。もし地面に倒れたら、たちまち襲い掛かって、引き裂かれてしまうだろう。「お前の娼婦を直接殺せないのは残念だが、遺体がないことを想像して楽しむよ」ドミトリはイリウムが全力でオナーを守ってくれるとわかっていましたが、またもや自分の女を守れないのかとおもうと暗澹たる思いでしたが、屋敷から銃声が聞こえてきました。イングリードと違い、オナーは犠牲者ではなく、ハンターなのです。

俺のオナー。

ドミトリも銃を引き抜くと、ハウンドをさらに殺し、残りは怖気づいてきました。その瞬間をねらって、カリストスの顔面を撃ち抜きました。ヴァンパイアが悲鳴をあげ、ひざをついたところで、こめかみを撃ち抜き、再生不可能な状態にしようとしますがカリストスは抵抗し、もみあいながら、首を切りさきました。襲い掛かってくる手をおさえつけ、足にかみついてくる犬をふりはらいつつ、心臓を二つに引き裂き、ナイフをねじりこみ、血がふきださくなったところでたちあがり、犬をふりはらいました。

遺体は放っておくと再生してしまいますが、ドミトリが立ちあがると、犬たちが引き裂かれた肉に飛びついていきました。

第36章 サロウ。ドミトリは心配で腹がよじれ、のど元に怒りがこみあげてきました。カリストスはドミトリの関心事をさぐっていたのです。オナーがイリウムと一緒に屋敷から飛び出してきました。ドミトリの携帯に電話がかかってきました。「ドミトリ? 弟のリサイタルにでかけていたので、あなたからの電話に出られなかったの」と自信なげな女性の声が聞こえてきます。彼は胸を蹴られた気がしましたが、「もう安全だ」「大丈夫なの?」「問題ない」こみあげてくる気持ちに蓋をする必要がありオナーに電話をパスしました。

部屋を1室ごとに改めていくと、生活した様子はかんじられませんでしたが、裏にはヴァンパイア化に失敗した遺体が残されていました。

翌日の夜に清掃などが終わると、オナーはドミトリを誘い、自分が監禁されていた場所に案内しました。「俺が先に入る。君は自分の悪魔と対決したらいい、だけど一人で対決しなくてもいいし、守られていてもいいはずだ」「じゃあ、一緒に」私は生き延びたんだわ。

その瞬間、生き物がとびだしてきました。オナーは撃ちはじめ、ドミトリがかばおうとしますが、やめて、私の獲物よ!と譲りません。更に撃ち続け、その生き物がうずくまると、手元のライトで照らすと、そこにはドミトリの手元にあった写真とは似ても似つかない血まみれで傷だらけで見るも無残な状態に変化していたエイモスでした。オナーは冷静に銃弾を心臓にむけ、撃ち尽くしました。「生き返るかしら?」「いや、彼は弱っていたから無理だろう。終わったんだ」

タワーに戻った二人。ドミトリは寝室のベッドを新調したようで、他の女性はここで誰も寝ていないと説明しています。

彼女は男たちに乱暴されている間はおとなしくしていましたが、男たちの一人が赤ん坊を連れ出すと暴れ出しました。殺された赤ん坊を奪い返すと、あとは好きにさせていましたが、隠れさせたミシャがどうかおとなしくしていてくれますようにとだけ祈っていました。ところが誇り高い父の息子であるミッシャが母親への仕打ちに逆上して隠れ場所から飛び出してきてしまい、捕まえてしまいます。男たちはこいつだけは生かして連れてこいという命令だといって、イングリードに好き放題したあと身体の骨を身動きできないほど折り、家に火をつけて出ていきました。

ドミトリは、娘を守り切れなかった私を許してくれないだろう。家族を守るため、人をもののようにしか考えていない大天使に呼び出されて戦いに出たのだ。帰ってくるといっていたけれど、私たちは待っていてあげられないのだ。彼の心は壊れてしまうだろう。

「オナー!」彼の隣で涙を流しながら眠っている女性を揺り起こしました。彼女はドミトリの胸で泣いて、泣いて、泣いて。彼はただ抱きしめてくれました。ドミトリは事件の片がついたことで、オナーには気持ちの整理が必要なのだろうと思っていました。

第37章 ドミトリのオフィスの横にある手すりのないバルコニーにオナーがいます。彼は私のだんなさま。法律上はともかく、魂ではわかってる。ドミトリは私に属してる。いつでも。

ドアがあいたのでドミトリかと思ったら、アシュウィニでした。オナーには友人が必要だとおもったイリウムが連れてきたようです。

「どうやってここまできたの?」
「信じてもらえないわ」

オナーのなかの過去と現在にあった壁は涙で取り払われ、過去の自分がはっきりみえるようになりました。過去の記憶は彼女を苦しめていますが、愛し愛されたこともまた思い出すことができ、しっかりと抱きしめられ目覚めた今朝のことも思い出しました。再び愛されているのです。でも彼女が言わなくてはならないことを聞く準備が彼にできているかしら。

ドミトリはバルコニーにいる2人の女性を見ていました。バルコニーの下で、何かあった時のために控えている天使をみるのは3回目です。

「2人を部屋に引きずり戻します」
部屋に入ってきたラファエルは面白がって「やってみたらいい、面白いことになるだろうな」
「あなたの伴侶はあなたに悪い影響を与えているようですね」
「私の伴侶はいま彼女たちに合流したようだぞ」

オナーの親友アシュウィニには珍しい能力があるらしい。不死のものたちには見逃せない能力が。「ジャンヴィエールが求婚したらしいぞ」「それならいいタイミングです。彼を私たちの側に引き込みましょう。ヴェノムがようやく完全に変身できる時がきたようです。ヴェノムは安定しているガレンと一緒に働ければ、よい影響があるでしょう」「そうだな、アオドハンはこちらで働く気持ちが変わらないようだ。たぶん、我々は彼の盾になってあげないとならない」「若い天使は?」「休んでいる。ただ彼は壊れないだろう」「よかった」

バルコニーでは、女性たちの話がはずみお互いの頭を寄せ合っていると、それぞれの髪が混ざり合い、男性の目を惹く光景になっていました。

「二年前には想像もしなかった光景ですね」
「変化を残念に思っている?」
「まさか」

オナーはドミトリとのスパーリングに負け、勝者の彼の要求に応えながら熱い時間を過ごしています。ドミトリは過去に1度しか許したことのない、特別な首への愛撫をオナーがしたので驚いて、だれに教わったんだと聞くと、

「あなたが他のひとと恋に落ちないでいるから、私があなたのもとに戻ってこなくてはならなかったの、旦那様」
「うそだ」
「いいのよ、信じなくて。ただ私に愛させて」

次に彼女が話したのは狭い地域でしか使われていなかった古代語で、ドミトリ以外もう誰も覚えていない言語でした。

「あなたのこととなると、私はいつも少しおかしくなっちゃうのようね」
「し、信じ・・・」
「しー、いいのよ」まったく頑固なんだから。

オナーが時折みせるしぐさとイングリードの記憶が彼の記憶とかさなり、彼の中が爆発しました。

第38章 「あなたに証明してみせるのに何年もかかるのではと思っていたんだけれど・・・」「出会った瞬間からわかっていた気がする」 

これを聞くのは酷なことかもしれないんだけれど、どうしても教えてもらいたいことがあるの。ミシャは、ミシャに彼らは何をしたの?

ミシャは壁に首枷でつながれていた。イシスは彼をヴァンパイアにしようとしたんだ。ドミトリは1000年近く泣いていませんでしたが、息子を腕に抱いて揺らし、信頼しきったまなざしが見上げてきて、彼の美しい息子の人生を彼が終わらせたときのことを思い出し悲しみが堰をきりました。

嵐の間抱きしめてくれる女性がいて、お互いの涙がまじりあい、彼が自分自身を永遠に許せないと思っている罪をやさしく許してくれている。

「カテリナも、ミシャも、俺が守ってやらなければならなかったのに。君のことも守れなかった」
「あなたは私たちのために戦ってくれたわ。もし2度目のチャンスがあったら、赤ちゃんを産んでもいい?」

「君はイングリードなのか、それともオナー?」
「イングリードは別の人生。わたしはオナーよ」
「俺から離れないでいてくれるならなんでもいい。1000年近く、君を待ち続けていたんだ」

「ギルドの古代語の教師の仕事は続けるわ」
「いいさ、おれたちは夜明けに結婚する」

「俺は君のものだ、いつまでも」
「愛しているわ」

「ヴァンパイアになりたいか?」もしも彼女が人間のままなら、自分も彼女と共に人生を去るつもりだ。
「私は誰の奴隷にもならないわ」
「問題ない、俺だけに仕えてくれれば」
「傲慢な男ね」

「最初はいやだと思ったけれど、あなたとの何百年もの人生を一緒に過ごしたい」
「結婚式が終わったら、ヴァンパイア化を始めよう」

「ギルドは受け入れてくれるかしら」
「君の友人たちなら味方してくれるさ」

「私がいなくなったあとのことをみんな教えて」
「長年生きてきたんだ」
「かまわないわ、私たちには永遠があるんですもの」




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